絶滅危惧種

 この地球上から姿を消した生物はおそらく数えきれないほどの数だと思うけど、いま新たに姿を消しつつある生物もまた数えきれてはいないのではと思う。世に言う絶滅危惧種というのはヒトに確認された種だけの話で、私達の知らない種も数多く存在すると言われているから、それらを含めると先ほど言ったようなことになる。
 レッドデーターブックと言われる本にはそういった絶滅の危機に瀕している植物、動物が満載されているが、身近なところでも、世界的にみれば絶滅危惧種とは関係ない種類の生物だが、いつの間にかなくなっていることに気がつくことがある。これを身近絶滅種、あるいは身近絶滅危惧種という。もちろん通説とはなっていない。私の住む近くを走る西武線の土手にはトラノオの群生している所があった。また同じ土手には山百合が数本生えていた。トラノオは辛うじて幾つか見ることが出来るが、山百合は絶えて久しい。これは定期的に草刈りをすることで、植生にかかる負担が大き過ぎるのが原因と思っている。この土手は外にも藪カンゾウ、ホタルブクロ、その他よく分からない野草がひしめいているところで、数百メートルの長さとは言えなかなか見るものが多い土手なのだった。草刈りなどもほどほどにされることが望ましい。
 その昔電車で通勤などという酷い環境に置かれていた時に、毎朝会う妙齢の美人がいたが、あれも何時の間にかいなくなった。絶滅した訳でもないだろうが、私の目の前からいなくなれば絶滅同様に寂しいものである。その内に私自身が通勤しなくなったのでまわりのヒト達から見れば、私が絶滅種と考えられているかもしれない。しかし、私に関心がある人がいたようにも思えないので、居なくなったことさえも認識されていないという方が正しいであろう。つまり、絶滅云々というのは認識されるかどうかによるかなりいい加減な尺度を持った判断で、絶滅危惧種と言われたものがひょっこり出てきたなどと言うこともよく聞く話なのである。しかし、アメリカ旅行鳩とかいう絶滅した鳩の最後の一羽を喰った不名誉は末代まで残るから、出来ればそのようなことには加担したくはないのである。

 なあに 私は絶滅危惧種じゃないわよ。