有体に言えば・・・

 こう言った言葉を聞く機会が少なくなった。使わなくなったと言えばよいかも知れない。言葉は生き物と言われるので、10年もすれば新語やら“変語”やらが混じってくるし、使われなくなる言葉も出てくる。「新語アナリスト」という妙な肩書を持つ人も居る。たしか誰かが「死語事典」というのを書いていた気もするが、いま一つ話を進めて言葉の死因や治療法などを解明した本を誰かが書いてくれないかと思っている。残しておきたい言葉、普段は使わなくてもいざという時に使いたい言葉、飾っておきたい言葉などの延命が出来るかも知れない。
 100年単位で考えれば新語も慣れてくるので気にもならないけれど、今出来の言葉にはやや戸惑いと違和感を持たざるを得ない。有体に言えばついて行けないのである。“がっつり”という言葉を最近よく聞く。これを聞くたびに背筋がぞぞっとする。座りが悪いというかなんとも嫌な感じが付きまとう。“なにげに”というのもある。これも椅子から転げ落ちそうな気分になる。一過性のものもあるし、しぶとい奴もあるがいちいち気にしていたらやってられないとも言える。しかし出来れば聞きたくないのである。“新しき”を今では「あたらしき」と読む。その昔は「あらたしき」であった。今でも“新たに(あらたに)”と古い読み方の用法も残っている。よくは知らないが、古い読みが正しくアタラシイ読みは誤用が定着してしまったのではないか、などと素人考えをしている。
“がっつり”や“なにげに”も「がっちり」や「なにげなく」の用法違いかと最初思っていた。しかしどうやらそうでもないらしい。聞けば意味が微妙に違うというのである。どのように違うのかは納得できる答えではなかった。有体に言えば使っている本人たちもよく分からないのである。言葉というのはそんなものかも知れないから、一概に切って捨てることも出来ない。有体に言えばどうでも良いことなのである。この文章からして“有体に言えば”という文言を使ってみたいだけで書いたものなのだ。しかし“がっつり”も“なにげに”も聞きたくはない(2度も繰り返すほどでもないか)。

有体なんて使わないよ 今は。