時間銀行

 時間を扱った本は沢山ありますが、なかでもミヒャイル・エンデの「モモ」は寓意話として人気のあった本です。余った時間を預けて利子を生みだすという怪しい男たちに、モモという名の少女が立ち向かいます。日本では児童文学のジャンルで扱われていた本ですが、大人たちがブームに火を付けました。私もご多分にもれず本を買いまして大変面白く読んだ記憶があります。
 「タイム・イズ・マネー」という格言があるくらいですから、時間を粗末にしない、有効に活用するというのは欧米や日本では当たり前のこととして考えられてきました。ところが、効率優先とか経済的豊かさを追い求めるなかで、それまでの流れに少し立ち止まって考えてみようとした時、常識を一度問い直す必要性や、ゆとりある生活とは何かといった問の中で「モモ」が注目されたのです。しかしその後にやってきたバブルの崩壊と長引く不況の中で、ゆとりも豊かさも吹き飛んでしまいました。もともと上っ面の底の浅いブームだったので、「モモ」は忘れ去られ現在に至っています。
 時間を貯めておけたならどんなことが出来るのかと考えたことがあります。コールド・スリープという技術はSFの世界ですが、もしそういった技術が実現するなら時間を貯める意味もあるかも知れません。しかし、浦島太郎になってしまう危険性を思うとかなりの決意が必要でしょう。その時その時を新鮮な内に使う、時間の使い方は生ものと同じような気もします。

時を忘れさせてくれる・・・・・。