神は細部に宿る

 無神論を標榜するものが今さら何を・・といったところですが、細部や緻密な部分に弱い私としてはまさに神に縁遠いのだと思わずに居られないのです。このところ再放送専門局とも言うべきBSプレミアムで、職人芸や細密画の世界を観るにつけ思ったことです。実際の現場や絵を観たのではないのですから、例によってお手軽上っ面の感想でしかないのですが、京焼、七宝、若冲、野田 弘志などを立て続けに観てそんなことを考えました。
 芸術の世界では細部に拘ることがマイナスイメージで語られることがあります。特に絵画などでは全体の中で対象を捉えることの大切さが強調され、細部に拘ると作品が迫力を失う、本質に迫れないなどと言われたものです。今でもデッサンなどはその手法が基本ではないかと思います。絵画の世界のみでなく、多くの場合細部に拘るのは歓迎されないことがあるようです。「重箱の隅をつつく」、「チマチマしすぎる」などあまり良い評価とは言えないレッテルを張られます。それやこれやで私の場合は人生のほとんどを大雑把、アバウトを信条にして生きてきました。早い話が細部に拘るだけの根気と努力に欠けていただけのことなのですが、それらを棚に挙げる言い訳として「細部に拘るな」というフレーズは重宝していました。
 しかしああいった細部に徹底して拘るものを見せられると、あの世界に没頭できる幸福を羨ましく思うのです。無い物ねだりだけでなく、ひょっとしたら神が宿るかも・・などと思ってしまいます。レオナルド・ダ・ビンチは自然を徹底して観察し理解する、自然こそが師であると言っていたようですが、若冲や野田 弘志、焼き物や工芸の職人たちも、あるがままの自然や緻密な世界に拘ることによってその先を観ていたのかもしれません。今さら方針変更や進路変更も出来ないから、大雑把に胡坐をかいて済ますしかないのですが、それにしてもこの国のヒトは細かいことに没頭しすぎ、なんて負け惜しみの一つも言ってやりたくもなりますが・・。

細部にこだわる・・・。