「ののちゃん」のシカト

 朝日新聞朝刊連載の4コマ漫画は いしい ひさいちという少し毛色の変わった漫画家が担当していますが、以前はかなり際どいジョークをネタにした漫画を描いていた(今も健在のようですが)人です。「ののちゃん」にも稀に登場する「地底人」シリーズや「くるくるパーティー」などブラックユーモア満載の作品が目白押しでした。メジャーなヒットとなった「おじゃまんが山田くん」などはどちらかというと「ののちゃん」同様に香辛料の少ない作品で、どちらが作者本来のスタイルなのか不明ですが、一般受けはするのかもしれません。
 その「ののちゃん」は、新聞の朝刊を担当する4コマ漫画としては意識して(としか思いようのないほど)時事問題をスルーしています。ずっと以前に自衛隊イラクに派遣されたとき、ぽろっと辛口のセリフを登場人物に喋らせたことがありました。私の記憶ではそれ一度きりです。3月11日から2カ月経ちましたが、「ののちゃん」は地震のことも津波のこともそして原発のことも一切シカトを通しています。私はこういうのが大好きです。私も含めてすぐ尻馬に乗りたがる、雷同したがる輩が多い世の中で貴重な存在に思えてなりません。朝日新聞の4コマ担当者が何も言わずに原稿を受け取っているとしたら、その担当者にも賛辞を贈りたいと思います。これからも「ののちゃん」のシカトが続くよう期待しています。

シカト。