喧嘩もしくは駆け引き

 菅首相北方領土に絡んだロシア大統領の行動を「暴挙」と発言したことで波風が立っています。領土返還運動の集会での発言と言いますからリップサービスの意味合いもあったのでは思いますが、いろいろ経緯があって現在のところロシアが実効支配している島に、ロシアの大統領が行くのを「暴挙」と言うのはやや無理があるような気がします。これから領土の返還交渉を始めようとする政府のトップとしてはもう少し考えてのおっしゃり様があったかと思うのです。これでは相手の思うつぼで、「お前がそう言う気なら 俺にも考えがあるもんね、話し合いなどしねえ」と言われてしまいます。案の定あちらのエライさんの反応はその筋書き通りになっているようです。
 「明日に向かって撃て」という名作映画のその最初の部分で、主人公のブッチが手下のでかい男と決闘するシーンがあります。自分の強盗団の主導権を巡る争いなのですが、その時ブッチはまず相棒のサンダンスに自分が殺られたら相手を殺ってしまえと言い置きます。それからおもむろに逸る相手(この人ややお頭がヤワイ)に対し決闘の作法通りに握手を求め、相手が油断して握手をしたとたん金蹴りを入れてやっつけます。汚いと言えばその通りですが、なんせ相手は自分よりでかい力も強い大男ですから、それなりの作戦をたててなお、自分が負けたときの場合も事前に手を打っておくと言った頭脳戦で勝負したのでした。ポール・ニューマンロバート・レッドフォードの絶妙のコンビがこの二人の主人公をやったのですが、あれくらいの段取りをしてから事に臨むのが喧嘩や駆け引きの常道でしょう。私はそのどちらも得意ではないし、また自分では出来そうにない芸当を羨ましく思ったものでした。自分に出来ないことを他人に要求するのは余り良いこととは思われませんが、国のトップをやってらっしゃる方はブッチやサンダンスを見習ってほしいと、つくづく情けない気持ちになったのでした。

喧嘩も駆け引きも気迫ね、眼よ、眼力よ。