忘れる

 図書館から借りてきた本を読み始め、早い時は数ページ、時には3分の一ぐらい読んでから“これ前に読んだ“と気がつくことがある。この間は借りてきた本2冊ともがそうだった。題名を忘れていることはもちろんだけど、装丁や作者さえも忘れていることがある。これが昔昔に読んだ本ならまだ諦めがつくのだが、比較的最近に読んだ本が多いから困る。きっと老人性の健忘症だろうし、考えようによっては2度楽しめる訳だからと自分に言い聞かせている。しかし、印象に残る本が少なくなってきたということは無いだろうか。インパクトに欠けるというか、読み易いのだけれど読後になってみると筋が思い出せない、といった本が多いように思える。
 中学生ぐらいまでは漫画しか読まなかったので、かなりオク手の読書経験しかないのだが、いわゆる純文学と言われるものから入った読書は、読むと言う作業にある程度没頭しないと理解出来なかった。きっとそんな読み方もあってか、読んだ本を忘れることがなかったのかも知れない。それやこれやで読書量は増え、ピーク時には一度に3冊から4冊を同時に読むようなこともしていた。かなり荒い読み方だったから内容については忘れることも多かったが、本を読んだこと自体忘れることは無かったように覚えている。それが今では借りてきた本が2冊とも既に読んだことのある本という体たらくなのだ。集中力の低下なのかそれとも本の質の低下なのか、悩むのは思い上がりなのか。
 ヒトの記憶が不確かなのは自明のことだから、忘れること自体は珍しくない。ただ自分に都合の悪いことは忘れ、都合のよいことのみ記憶する、或いは思い出したくないことを忘れられず、覚えておかなければならないことを忘れる、といった演出を脳は勝手にやるので油断できないとも言える。そんな自己演出のせいで何度も同じ過ちを犯す愚を思えば、読んだ本を忘れるぐらいは何の不都合も無いこととも思えるから、気に懸けること自体が無駄ということかも知れない。

問1   さて上の文はいったい何を言いたいのでしょう。次の中から選んでください。
答    1.ピーク時には一度に本を4冊も読めたという自慢話。
     2.ヒトの記憶は不確かなので当てに出来ない。
     3.歳をとって健忘症になったのが悔しい。
     4.何を言っているのか分からない。

4番に決まっているでしょ 馬鹿ね。