紅葉の山で思ったこと

 20年あるいは30年ぐらいにもなろうかと言う久方ぶりの谷川岳に行ってきました。上越の紅葉はどこも艶やかですが、特に谷川岳熊笹の下地の上に色を散らすと言う、おそらく世界でも類を見ないような紅葉が楽しめるところです。先週はその紅葉がちょうどドンピタで、天候も味方してたいへん結構なものでした。ロープウェイで天神平まで登り、後は頂上まで尾根伝いに登るという年寄り向きのコースですが、平日にもかかわらず引きも切らない登山者でびっくりしました。昔登った頃の静かさから考えるとやはり「隔世の感」という常套句が浮かんでしまいます。しかしヒトは多くても紅葉の素晴らしさは変わらず、「なべてみな 景色はよきに 人のみぞおぞましき」などと嫌みの一つも言いたくなる気分も引っ込んでしまいました。
 下山途中に外国人の二人ずれと会いました。おそらく彼等にとってこの紅葉は、忘れ難い思い出となるでしょう。日本は山に恵まれています。ヨーロッパやヒマラヤの山(両方とも行ったことが有りませんが)と異なり高さやスケールでは一歩譲りますが、四季を通して登れるコースを持ち、特に春と秋の新緑、紅葉は世界に誇れるものでしょう。しかし残念なことに、その素晴らしさが外国の人達にあまり知られてないのです。ヨーロッパやヒマラヤは山が観光の対象となって人が訪れます。秋葉原と奈良、京都だけが観光の目玉と言うのは、あまりに日本の自然を甘く見ているとしか思えません。ただ、山の観光先進国のスイスやイタリアと比べると、日本の山は周辺整備が著しく遅れていて、とても外国の皆さんに胸を張れるような状態とは言いかねます。自然に価値を見出しそれを守り育むことはまさに文化国家のステータスです。むやみに物をつくり輸出するばかりでなく、この国に来てもらって喜んでもらう経済の仕組みを考えることも大事かと思います。

天神尾根から谷川岳をのぞむ 10月14日