一枚の絵

 レオナルド・ダ・ヴィンチの素描は魅力的なものが多いのですが、なかでも「風景の中に立つ女性」(指をさす女性)は象徴的で構図も素晴らしく大変好きな素描です。左手で指さして身体をややその方向に反らすポーズは、正面を向いた顔とよく調和し絶妙なバランスをとっています。左手のさす方向に見るものを誘導する魅惑的な微笑みは、それだけでも十分に魅力的ですが、指先のその向こうに何が有るのかと観るものを期待させずにはおきません。
 ルネサンスの天才の残した油絵は驚くほど少ないのですが、素描はかなりの枚数を残しています。ただし普通の画家と異なり兵器や機械だったり解剖図だったりする素描が多いのが特徴です。以前、東京で素描展が開かれた時に医学的見地?からの性交図(解剖図)が展示されていました。画家はいろんなものを書くと感心した記憶が有ります。ああ言ったものは流石に新聞やTVでは扱わないので、やはり展覧会に足を運ぶことがないと観られないものでしょう。ダ・ヴィンチに限らず、素描は画家の呼吸を感じることが出来るものが多く、実物を観ることが特に面白いのです。
 冒頭の素描の実物は観てないのですが、縦21センチ横13.5センチの紙に黒いチョークで描かれたものとされています。モノクロの色調だけで描かれた女性は、数百年にわたって私達に道を指し示しています。あの先に何が有るんでしょうねえ。

この眼差しの向こうに何が・・?  いえ、私が居るだけで・・・。