イヤサレタイ

 日比谷公園で盆踊りがあって、勤め帰りの人達がスーツ姿やYシャツ姿のまま踊っている映像がテレビから流れてきました。踊る大捜査線ならぬ踊る勤め人です。東京音頭や炭坑節に合わせ踊る勤め人達は楽しそうで、例によって“癒される“を連発していました。東京音頭はもともと丸の内音頭という名前だったそうで、戦前の不況期に景気づけのため日比谷周辺の商店街が始めた盆踊りの曲だったと言います。何年か前に再開された日比谷公園での盆踊りは、数万人が集まると言い、日本で一番大きい盆踊りなのでしょう。
でも何か変、おかしいのです。
 鞄やショルダーバックを肩から下げた勤め人の男女が、にこにこ笑いながら踊る姿はほほえましいと言えばそうなのですが、その場違いな姿形だけでなくある種異様な光景に違和感を覚えてしまうのです。盆踊りと言えば子供の頃には一大行事で、どこの町内でもやぐらを組んだり、屋台が出たりで賑やかでした。早めの晩御飯を食べて家族で出かけるのが一般的な盆踊りの楽しみ方で、背広姿やスーツ姿のおねーさんは見かけたことは無かったのです。まして“癒される“ために踊る人達はいなかったのではないのでしょうか。この頃は何にでも癒されたい人が多く、もともと「癒す」は病気や痛みを取り除くことだから、本当に癒されたいのなら病院に行ったほうが適切な治療が受けられるし、そんな大げさでないものなら放って置いても大丈夫な訳で、言ってみればそんな「癒されたい」は仮病みたいなもので、ただそういった状況に自分を置いて自己憐憫に浸っているだけなのかもしれないのだよ、ワトソン君と言ってみたくもなるのです。
 大体勤め帰りに盆踊りする余力があるのなら、早く家に帰り便所掃除でもしたほうがよほど健康的であるなどとは申しません、しかし・・・。なぜ突然便所掃除が出てきたか私にも分かりませんが、癒しはいやしいに通じるような、それで罰として便所掃除かと・・・。


いやされて・・・ね。