思いつくことみな古くなる

くどくなる 気短になる 愚痴になる 思いつくことみな古くなる
井上 ひさしさんが創ったざれ歌です。これには続きが有り
手はふるう 足はひょろつく 背は屈む 耳は聞こえず 目は疎くなる
さらに
身に合うは 頭巾 襟巻 杖 眼鏡 湯たんぽ 補聴器 尿瓶 孫の手
と展開します。言葉の達人だった人の若い時に創られたざれ歌ですから、老人の特徴を的確につかみ、さらに面白く、おかしく、自分とは距離のある対象に無造作に投げつけた言葉のつぶてのように思います。あの頃の井上さんはかなり毒の効いた書き物が多く、その毒に魅了された私などは書かれた戯曲を片っ端から読んだのです。シェクスピアに匹敵するとまで思ったものです。その後井上さんも年を重ねるとともに角が取れ、毒の調合を変えてきました。しびれが残る様な、それでいて死ぬことは無い程度の毒は、同じように年を重ねる私にとっても好都合で、その後も井上戯曲を読み続けました。紀伊国屋での上演にも幾度か行き、本と舞台の違い、また、本を読むことで舞台を見たと思えるような、戯曲を読む楽しさも覚えました。
 気が付けば、すでに私も冒頭に挙げたざれ歌の年齢に近くなり、どうもこの頃では昔のことばかりが思い浮かぶようです。残り時間の勘定が出来るような年齢に近づいてきたとも言えるのでしょうか。今日挙げたざれ歌も記憶のみで書きました。古いことは思いだせる、でも新しいこととなると・・・・、これはあの・・・えーとほら・・・・・・。

私も歳をとるのかしらね