先進国病

 一昔前かと思いますが先進国病と言うのが話題になりました。晩婚化、少子化、離婚増加、自殺を伴う精神の病、無気力化など、経済的にある程度恵まれた社会の中で起こる様々な日常現象につけられた名前だったように記憶しています。ヒトは「衣食足りて礼節を知る」と言われていましたが、どうやら知るのは礼節ばかりではないようなのです。むしろ礼節などは本来の目的を忘れ、形のみにこだわる形骸化、形式主義に変節してしまったかのように思えます。飢餓の恐怖から解放され、寒さや暑さから身を守ることが出来るようになると、ヒトはどうもやる気がなくなるようです。でも考えてみれば当たり前な訳で、衣食が足りてしまえばあえてあくせく働くことは無いのですし、食べ物の調達以外にも手を出すようになります。すると余計なこと、人生とか将来を考えたり、また本を書いたり絵を描いたりもするでしょう。一人で居る時間が増えれば結婚生活から遠ざかる機会も多くなり、いきおい子供や家族をそれほどに必要としなくなります。そのうち一人で居るにも飽きてきていっそのこと死んでしまえ、となるのです。まあこれはかなり極端な筋書きですが、先進国などで自殺者の増加や晩婚化が進む原因のひとつには、こう言った流れに近い現象が関係していると思われるのです。
 近頃よく言われる草食系人間なども、経済的に恵まれた国、もしくは階層から出没しているのではないのでしょうか。食うや食わずの日常ではどうも生まれそうにないタイプとも思えるのです。ヒトが滅びるパターンの一つに、文明が進みストレスや矛盾が少なくなるとヒトは自らの存在を否定したくなる、つまり存在意義を見いだせなくなり、その結果無気力化し文明の退行現象が始まり滅びていく、と書いたSFが有った気がします。案外当たっているかもしれません。

あなたも病気なの?