食べる

 子供の頃にベーコンと言えばクジラの脂身でした。今ではほとんど目にしません。
「ザ・コーブ」というドキュメンタリー映画アカデミー賞をとって世界中で注目を浴びました。日本のある入江で行われているイルカ漁を、イルカを守る立場から撮影されたものらしい(まだ観ていないので)のです。クジラが厳しい規制の中で簡単に捕れなくなった今、イルカはその代替品として一部の地域で流通していると聞きます。つまりイルカは食べるために捕獲されている訳です。ヒトはいろいろなものを食べます。ある人によれば、ある国の人は“飛ぶものは飛行機、足のあるものは机以外は食べる”と言ったくらいです。まあこれはジョークですから実際に椅子を食べる人は居ないでしょうが、それくらいなんでも食べると言うことでしょう。
 クジラやイルカの捕獲に反対する理由の一つとして、よく知能の高さがあげられます。しかし知能だけで言うなら、豚は高い知能を持っていると言われていますし、牛や羊だって生物学的には進化を遂げた哺乳類です。魚にしたところで、イワシやアジと言った小型の魚は群れをつくることで外敵からの攻撃に対抗します。その時にはある種の信号を出して統一した行動がとれるように連絡し合っていると言います。いくら知能が高くても無差別にミサイルを撃ち込んだり、殺戮するためだけの兵器を開発したり売ったりするヒトなどは、それらの生物と比較してもあまり誉められた存在とは言えません。
 私はクジラやイルカの捕獲には賛成できません。しかし、本当に食べるために必要であれば仕方ないとも思います。ヒトが生きていくことは、ヒト以外の様々な動植物を食べることです。食べてよいものとそうでないものを決めることはそう簡単ではないでしょう。「アンデスの聖餐」や「野火」にも有るように、その時々の状況による場合が多いのです。必要最小限の量と、節度をもった食料の摂取を心がけるほかに方法が無いように思えます。けれど、そのことが儘ならないから問題が起こる訳でもあるのですが・・・。この国の食糧事情が特別に悪いことも無いのですから、ただ食べたいから、という理由だけで生き物を殺すのはもう止めにしたらよいとも思います。それは文化の成熟度をはかる物差しとも言えるのではないでしょうか。

あら 今日は真面目なんだ。