歌う

 大観衆を前に朗々と歌う。野外ステージで弾けながら熱唱する。一人のために心をこめて歌う。いろんな歌い方が有るけれど、誰もが一度は憧れるものの一つです。歌手という職業はそれらをすべて実現できる(もちろん人気が出ればの話で)ので、老いも若きも、女も男も歌手願望を持つようです。カラオケはそれを受け止めて商品化した成功例と言えるでしょう。
 ヒトはいつごろから歌うようになったのでしょう。言葉を獲得する前からでしょうか。スキャットやハミングと言うのが有るのですから言葉が無くても歌は成立するはずですが、やはり言葉が先に有りそれに節がついた、というのが歌の出来る流れではないかと思います。現在の歌のルーツは良く分かりませんが、キリスト教の賛美歌にその発展の原因が有ることは間違いないと思います。バロッククラシック音楽は当然のこととして、ポピュラー音楽と言われるジャンルにも様々な影響を与えています。無宗教の私でもカンタータなど聞くとコロッとその気になってしまうので、音楽の持つ魔力、歌の力を感じずにはいられません。
 ヒトはいろいろな旋律に反応しますが、それは楽器が奏でるものでもヒトの声でも同じです。とくに肉声は楽器とは異なる音色(柔らかい音声とほどほどの音量)を持っているうえ、なにしろ言葉をのせて演奏する(歌う)ので一段と親近感が生まれます。アカペラと言う歌い方が有りますが、伴奏も無くそれでいて心に沁みる(もちろん上手な人が歌えばの話ですが)たいへん結構なものです。私はスコットランド民謡やイングランド民謡を聞くたびに遥かな郷愁を感じます。長いこと彼の地に居た、からではありません。きっと小学校の頃習った歌があの辺りの民謡だったからでしょう。それでも、“庭の千草”を聞けば心のどこかが反応します。不思議なものです。お経やご詠歌ではあまり感じないのですが・・。
 動物の中ではヒトだけが歌うようです。鳥はよく歌うと表現されますが、さえずりは少しそれとは違うようです。クジラも歌うと言われます。しかし、ヒトの歌とはこれも少し異なるようです。自白することを「歌う」と言う方面も有るようですが、あまりその方面の厄介にはなりたくないものです。

PAはもういいから マイク、マイク・・。