調律

 10何年か振りでピアノを調律する。もう古いピアノだから捨ててしまおうと考えていたのだけれど、捨てるにもお金がかかり、なんせ重くて大きいものだから簡単に処分することも出来ない。そこで場所ふさぎで邪魔だけど調律して使おうと思いなおした。
楽器は普段から使い手入れしないと駄目になる。よい楽器は使い込むほどよい音色で響く。百年、二百年経っても現役で使われるし、むしろ音色は新しい時より良くなっていることが多いと言う。
 パソコンに代表されるデジタル機器は5年もすると陳腐化してしまう。作動はしても道具としては意味を待たない代物となってしまうのだ。携帯電話などはその代表選手みたいなもので、2年もすると買い替える人が多い。次々と新しい機種が出され、ろくに使い方を覚えないうちに壊れたりもする。道具に対する基本的な考え方が変わってきているのだろう。ヒトは様々な道具を造り使ってきたが、こんなに短期間で使えなくなるものはかつて無かったのではないだろうか。
 多くの楽器はアナログな道具の一種なので、デジタル機器とは対照的に位置するものと言える。しかし、ともに最初は使いこなすのに苦労するが、慣れてくると手放すことが出来なくなる点は似ている。アナログな道具は極端に趣味化したり或いは収集されたりするが、デジタルな道具は出来てから日も浅いこともありそんなことは聞かない。どちらが良いとか悪いとかではないが、道具好きとしてはデジタルに一抹の寂しさを感じる。
 だからどうした、調律という主題はどうなったのだ、と言われればどうにもなっていないのだが、ちょっと随筆風に気取って書いてみただけなのであった。

私はアナログね (しかしいつ見ても寝てるね) あすはお休み