「米軍基地がやってきたこと」という本

 ”リリー・パッド“(蓮の葉戦略)という用語もこの本で初めて知った。”リトルアメリカ“として知られる広大な敷地と生活施設に囲まれた米軍基地が、その維持や建設に多額の費用と現地住民の反対に会うことが多くなり、低予算で賄えてなおかつ効果的で反対運動も少ない「協力的安全保障拠点」として小規模基地の有用性が高くなっていて、それをリリー・パッドと呼ぶらしい。この小規模基地がこのところ急速に増えていて、アメリカの基地戦略の中心になりつつあると言う。”アメリカ帝国主義“などと その昔に使われた呼称が、案外と今でも現実味をもっているかもしれないのだ。新政権になって、軍事費を大幅に増額する、強いアメリカを復活させると息巻くトランプ大統領を見ていると、覇権主義国家としての野望さえ見えてくる。
 白状すると、子供のころには米軍基地の中に入るのが楽しみで、年に数回、独立記念日とか三軍記念日とかに基地が一部開放されて、売店やアトラクションが催されるのを、心待ちにしていた。緑に芝生と野球場やらテニスコートやらがあって、広い庭とカラーペンキで塗られた住宅街は、”豊かなアメリカ“そのものだった。この本にも書かれているが、基地は戦時・戦略上の拠点だけでなく、置かれているその国の文化や経済・政治にも多大な影響を与える。親米になるか反米になるかは別にしても。とにかくその辺りのことがよく分かる本であり、監修者があとがきの最後に書いているように、「米軍が基地を使って何をやろうとしているのかが分かってしまう、国家機密暴露の本だと言える」のだ。口を開けば”国を守る気概“だとか”防衛力の増強“、果ては教育勅語や道徳まで持ち出して”戦前回帰“を目指すかのような安倍首相や稲田防衛相は、一度この本をじっくり読んだ方が良いと思う。あくまでもアメリカを守るために置かれている米軍基地の役割についての理解が進むだろう。おしまい

困ったことよ