イギリスのEU離脱

先週はイギリスの国民投票で大騒ぎがあり、結局イギリスはEUからの離脱を選択し、2年後には独自の経済運営を進めることとなる。EUの理念が当初ヨーロッパという共同体の範囲をどこまでとしていたのか、その辺りの事情を私は知らないのだが、拡大を続けていたように見えるEUが目測を誤ったことにも原因があるようにも思える。
私は、今回の事態は起きるべくして起きた、と思っている。EU域内での統一通貨や自由な人的交流、経済交流は、加盟国間のモロモロの格差が少なければ大きな混乱や軋轢は生まれない。しかし現実には加盟各国間の格差が大きく、理念だけでそれを埋めることは無理だった。今後離脱がイギリスに留まらずに他国に及ぶようになれば、もうEUの未来はないであろう。
今回のイギリスでの離脱騒ぎは世代間での温度差が大きかったと言う。これは何を意味するのだろう。若年層を中心に残留支持が高く、また都市部でも同様な傾向があった。反対に中高年以上に離脱支持が集まり、地方では離脱派が多数を占めた。男女間での差異はどうだったのだろうか、気にかかる。若年層対中高年、都市対地方という構図は、保守あるいは守旧と革新もしくは新進といったレッテルを張られた時代があったが、離脱イコール独立、残留イコール融合とも言えるムードもあったようだから、アイデンティティーあるいは自己主張の強さも影響しているのだろう。また離脱決定後の“揺り戻し”というか、国民投票のやり直しを求める署名が数百万に達する状況も生まれていて、今回の離脱をめぐる国民投票はすんなり収まりそうにない。
私たちの国も“国民投票”を間近に控えている。難民問題もなくテロもなく、オリンピック招致贈収賄問題や原発存続問題などは争点にもならず、憲法改定の発議や立憲主義よりも経済政策優先の、言ってみれば理念より実利に関心が強い国民性そのままの“投票”が繰り返されることになるかと思うと、イギリスの“大騒ぎ”がやや羨ましい。


先が見えない・・・