労働崩壊

効率化と能力主義、国際競争力の強化などの掛け声のもとに、気がつけば労働人口の半数近くは非正規雇用となり、あろうことか公務員の3分の1も非正規の職員が働くという、“恐るべき”雇用状況が出現しています。必然的に低賃金に過重労働、権利無視の労働環境があちこちで放置、助長されているのです。とくに福祉関係、建設関係は劣悪な雇用状況に陥っていて、製造業も中小企業、下請けを中心に低賃金と人手不足で四苦八苦していると言われています。先日のNHK「クローズアップ現代」はその辺りの状況を詳しく特集していました。
近頃よく耳にする人手不足、労働力不足が事実とすれば、当然のこととして賃金は上がってよいはずです。しかし実態は上がるどころか業種によってはかなり下がっていると言われ、名目的に上がったところでも実質的には低下しているのが現実と聞いています。政府、日銀は口を開けば「景気は確実に回復している、賃金も上がっている」と繰り返します。けれども巷での感想はそのようなものではなく、物価の値上げばかりが先行して収入が一向に伸びないことにいら立ちさえ感じているのが実情です。
このような労働環境の悪化はなぜ起きてしまったのか、“サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ”と唄われた時代を知っている者としては納得出来かねる事態なのです。“あんたらの世代が今の事態を招いた”と言われれば思い当たる節もないではないのですが、それにしてもヒドイことになっていると思うのです。その昔本で読んだ初期の資本主義社会のような状況が目の前で起こっているような気がします。資本主義の悪弊をできるだけ少なくするというベクトルがもう作用しなくなってきているとすれば、やはりどこかで反乱することが必要なのではないでしょうか。貧困と差別がその原動力であるとするなら、歴史はまったく進歩をしていなかったことになり、20世紀の後半部は何だったのか改めて考える必要がありそうです。

そうね