雲 ( 祝敬老の日・・何せ高齢だから私も)

もし空に雲が無かったなら、小説家や絵描きはかなり食い詰めたと思います。空の青、雲の白は対となっているもの、男と女、山と川、陸と海・・・etc.な訳で、どちらか片一方が無いということは考えられない関係なのです。
「雲は天才である」という本を書いた石川 啄木のみならずとも、私でさえ雲の造形上の複雑さ、豪快さ、優美さ、そして自由な動きには目を見張りっぱなしのものなのです。一つとして同じ形はなく、時々刻々変化するその様は見ていて飽きることを知りません。とくに夏の積乱雲、入道雲雄大で躍動的、究極のダイナミズムを感じさせます。灰色に空を覆う雲も、よく見ると複雑な模様と色を持っています。また台風の前後に出る雲は、色、形、種類とも豊富ですし、これから本番となる秋の高層雲や、まれに見ることが出来る彩雲などに出くわしたときは、僥倖と言いたくなるほどの喜びです。夜の雲も綺麗なものです。とくに月の光に照らされて青みを帯びた雲は、幻想的な美しさを醸しだします。しかし何と言っても、青い空と白い雲の組み合わせは文句なく美しく、幾人もの印象派の絵描きさんたちがこれの虜となりました。
デジタルカメラとプリンターの性能が格段と良くなって、今では家庭でも空と雲の写真をかなり大きくして楽しめます。けれども天気の良い日に空を見上げるだけで、目の中に染みてくるような青い空を、白い雲を眺めることが出来るのですから、おまけにすべてタダで見られるのですから、これからの季節は何とも結構なものと一人ほくそ笑むのでした。

空、雲、ススキ。秋の主役たち