6本爪のアイゼン

今年の3月、奥多摩鶏頭山に登ったおりに季節外れの暖気と寒気が交互に来て、何でも無い登山道が一部ガチガチに凍っていました。ちょうど下り坂でもあったので、こりゃ駄目だわと引き返してきました。今年は例年では考えられない気象現象が多発し、おそらく来年も再来年も、いや、これからずーと今年のような激しい気候が続くかも知れず、山だけでなく街中でも冬には道路が凍りつく、何てことにもなりかねないと考えたので6本爪のアイゼンを買い求めました。
まあこの噺の後半は冗談ですが、前半は本当で、ガチガチに凍った登山道には参りました。その事もあり、またもう歳ですので冬のハイキングでずっこけないためにもと、アイゼンなんてものを何十年かぶりに買ったのです。ネットで注文したので現物が送られてくるのはしばらく先でしょうが、“クライミングギア”と言ったジャンルの小物を買うのはもう無いと思っていたので、やや興奮気味のとも言える気分を少し味わっています。
私が最初に買ったアイゼンは、8本爪の鍛造性でかなり重いものでした。その後12本爪のプレス型を買い、これは出歯アイゼンとも言ってつま先に2本爪の出ているもので、爪の数は4本増えても重量は格段と軽くなっている優れモノでした。氷壁も登れるという、私にとっては過剰装備(氷壁では結局一度も使わなかった)とも言える代物でしたが、今は埃をかぶって在る所につるしてあります。考えてみると、クライミングギアと言う代物は物騒な形態のものが多く、ピッケルにしてもバイルにしても充分に凶器となりうる代物で、ハンマーやハーケンだって、あんなものをじゃらじゃら体中に付けて街中を歩けば、交番の前は素通りできないこと請け合いのファッションです。ヘルメットをかぶりフルハーネスをつけて、カラビナやらハーケンやらを体中にジャラジャラさせ、足には出歯アイゼン、両手にピッケルとバイルを持てば、もう完全に何日かは帰れない人となるでしょう。山の中でしか通用しないファッションですが、こん後そんな姿をする機会はないから心配はありません。6本の爪はおとなしい老人向きのクライミングギアです。

気をつけなさいよ 歳なんだから