焼き物

焼き物と言ってもサンマや肉を焼いたものではなく、それらを入れる器のほうです。
私は焼き物の器が好きで、とくに和食器は形や色が豊富だから、見ていて楽しいものが多いのです。この頃ではあまり買い込んだりしませんが、見ると欲しくなる時期がありました。では和食党かというとこれまったく洋食党で、この辺りが自己矛盾しているというか、和食器に洋食を載せて使っています。
 焼き物には益子などが有名な土ものと、京や有田などの磁器がありますが、私は伊万里と呼ばれる磁器の食器が好きです。中でも染付の食器が好きで、江戸の後期に作られた染付が色、文様ともに好みです。今では小さい物でも“伊万里の染付”というだけでかなり高価ですから、気軽に買うことの出来る食器ではなくなってしまいました。安かった時に買い求めたいくつかの食器は、大事に大事に使っています。150年、200年を経ても一向に色褪せない染付の食器は、何世代にもわたって使われる道具であり美術品でもあるのです。
 「伊万里 染付の美」という本がつい先ごろ出版されました。この中には伊万里の染付の大皿が139点紹介されています。瀬川 竹生というコレクターの方の収蔵品とのことです。掲載されている写真はどれも素晴らしく、染付の大皿、それも30センチを超える、ものによっては50、60センチもあるというのですから、実物の迫力は大変なものであろうと思います。大皿の用途というのは“ハレ”の場所での主菜を盛る器ですから、絵柄も大きく派手なものであったり、手の込んだ文様の満載されたものであったりします。見て楽しむ要素が強い器でもあるのです。日常の用に供される器とは少し違うかもしれませんが、まさに美術品と呼ぶにふさわしい風格です。お金があれば(この辺りが私の限界で、コレクターは前後の見境なく、欲しいものはお金を借りてでも手に入れるそうです)一枚欲しい代物ですが、せいぜい本を見てため息を漏らすほかないようです。
 

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