コンダクター

 オーケストラの指揮をする人で、“マエストロ”なんて呼ばれてもいます。その昔は指揮者というのは居なくて、第一バイオリンのトップ、コンサートマスターと呼ばれる人がやっていたと聞いています。また作曲した人が指揮をするなど、指揮者というポストが独立したのは近代になってからのようです。と言うことは、指揮者がいなくてもオーケストラは成り立つ訳で、なんで余分なものをわざわざ創ったのか、この辺りの事情はよく分かりませんが、今ではこの指揮者の人気一つで客の入りが違ってくると言いますから、さらに分からないことだらけです。
 まあ、あれだけ楽器があるオーケストラは、いくら楽譜があるとは言っても、統制のとれた曲を演奏するのは難しいでしょうから、調子をとる人を前に置くことを考えるのは成り行きだったのでしょう。しかしその調子をとるだけの人がオーケストラの顔として重要なポジションになるには、それなりの実績と言うか、オーケストラの演奏に劇的な変化の起こることが必要になって来ます。つまり指揮者の棒の振り方で演奏が良くなったり悪くなったりすることが現実に起こったのだと思います。残念ながら私の力量ではその辺りの変化について行けない、指揮者の違いが演奏の違いになる顕著な事実を確認できないのです。コアなクラシックファンであれば分かるのでしょうが、中学を卒業するまでクラシックなど音楽の授業以外で聞いたことも無い生活でしたから、無理も無いと言えば無理も無いのです。勤め先がNHKのすぐ傍だったこともあって、N響の定期会員となり2年ばかり毎月演奏会に通っていたのに、途中で寝てしまうことたびたびで自分でも呆れてしまいました。この頃はもっぱらCDとiPodにたよる日々ですが、いまだに指揮者の区別はつきません。
 近頃になってつらつら考えるに、指揮者の存在はオーケストラと聴衆との接点というか、聴衆を音楽へ導くものといった役割を担っていると思えるのです。指揮者のボディランゲージを見ることで、聴衆は音楽の世界に踏み込めるような気もします。「コンダクター」と言う言葉には“案内者”と言う意味もあるようですが、正にそんなところなのかも知れません。

ボディランゲージ