悔いる

 後悔は先に立たず」と言いますが、あとになって悔やむことは数知れずあります。「悔いのない人生」なんて言うのは空論で、“いくら食べても太らないからだ”と同様ありっこないのです。
 小学5年生の時に好きな女の子と机を並べることになり、もうえらく舞い上がっていた時のことです。蒲団屋の子で目がややつりあがった勉強のできる子でした。どんな話をしていたのかもう忘れましたが、ひとつだけ鮮明に覚えていることがあります。その頃コニー・フランシスの「カラーに口紅」という歌が流行っていて、私がかっこをつけてその歌を口ずさんでいたのです。するとその子は“その歌 カラーに口紅 ね”と言ったのです。私は“やった”と思って“さすが女の子だよな”と気の効いたことを言ったつもりでした。しかしその時の私は「カラー」が襟とは知らず、「色」と思っていたのでした。さらにその歌が彼氏だか亭主だかの浮気をなじる歌だったと知ったのははるか後年になってからだったのでした。きっとあの子は“まったく何も知らない馬鹿な子”思ったでしょう。そうなんです、私は馬鹿な子でとんちんかんな知ったかぶりだったのです。


馬鹿ねえ。