自粛

 私はこの自粛という行為に何か欺瞞的なものを感じるので、あまり好ましく思ってはいません。自己規制というのもありますが、これは時と場合によっては必要と考えていますから許せます。「どこがどう違うのか」、と言われても適切な答えを用意してないので適当に考えて欲しいのですが、とにかくそういうことです。とマアこのように書けば「ああ、今回の震災がらみの自粛のことだな」と、すぐこれからの話の持って行きどころがばれるのですが、まったくその通りの分かりやすい展開となっていきます。
 私が以前に住んでいた国立は、駅前から大学通りという広い歩道をそなえ立派な桜並木が続くメインストリートを持っています。毎年ここでは桜祭りが行われ、5月の連休には「天下市」なども開かれる、言ってみれば市民の憩いの場所でもあるのです。この頃ではこの街もケバイに街に様変わりしたらしく、ひと頃の落ち着いた学園の街といった風情が薄れてきたと住んでいる知人は嘆いていますが、それでも毎年咲く桜は以前と変わらぬ美しい花をつけ大学通りを彩ります。この桜祭りが今年は中止されたと新聞で伝えられていました。各地でも同様に桜祭りや花見の行事が中止されていると言います。なにも年に一度の楽しみまで止めることはないでしょう。災害なんていつ来るか分からないのだし、楽しめる時に楽しんでおく、美味しく食べられる時に食べておく、このことが後悔しないコツなのです。今年の花見を自粛したところで津波に流された街が元通りになる訳でなし、来年はわが身に災難が降りかかり花見どころではないことだって有りうるのです。どうもこの自粛というのは、世間を気にする小物が考える方便のように思えて賛成できません。
 ここは一番パーと陽気に行きましょう。なにも馬鹿騒ぎをすることは無いのですから、普段通りに理性の赴くままに、品よく矩を超えず欲するままに・・・。

いやあ良く咲いたね、今年の桜は。