ヴァイオリンを弾くヴィーナス

 ギリシャ彫刻がヴァイオリンを弾いているかのような錯覚を覚える光景でした。
ヴェロニカ・エーベルレさんという21歳のヴァイオリニストで、ヨーロッパでは大変高い評価を受けていると言われ、19歳に時に初来日し今回が2度目という新進の方です。
N響定期公演が行われたサントリーホールでの演奏をテレビで見たのです。曲目はブラームスのV協奏曲で、力強い堂々たる演奏は、その容姿に負けない迫力ある、それでいてエレガントな演奏でした。やはり神様は、気にいった人にはいくつものプレゼントを贈ってしまうようで、まったく差別的な御仁です。
 その映像を見ていて気になったことがありました。カメラのアングルがヴェロニカさんの背中によく当たるのです。確かに背中から垣間見える彼女の横顔は大変美しく、演奏を忘れてしまいそうになるほどなのです。カメラマンもそれを意識してやっていると思いました。このN響公演の際のカメラアングルが、たびたび綺麗な女性演奏者に当たることがよく有るのです。このことが前から気にかかっていて、きっとカメラマンやディレクターの趣味がそのまま反映されているな、と常々思っていました。今回のヴェロニカさんのカメラは、それがモロ出ていたと感じました。まったくNHKのカメラマンたちは差別的なんだから、まあ反対はしませんが。
 江戸から明治にかけて来日した欧米人の、特に女性たちに向けられた一般庶民の賛辞は大変なものであったと言われています。金髪と白い肌、華やかな目鼻立ちや洋服など当時の日本人にとっては、見るものすべてにわたって驚くべきショックであったろうと思われます。100年以上経った今でも当時を彷彿させるに十分なヴェロニカさんでした。もちろん演奏のことですよ、誤解のないように。

エレガントってわたしのこと?