軍艦マンション

 新宿の大久保、職安通りに今も聳えています。この「聳える」という字がぴったりの建物です。もう40年も前の建築ですが、今ちょうど改装中で来年には綺麗になるようです。渡邊 洋治という建築家の設計による建物で、建築当時はかなり雑誌で取り上げられ話題になりました。最近近くに行ったので見たところ、あちこち鉄板の錆が出ているようで(外壁に鋼板が張ってある)ブログで書かれているように、幽霊軍艦にも見えます。自殺者がいっぱい出たとか、ハングルに占拠されたとかいろいろ言われているようですが、いつ見ても迫力のある建物であることは変わりません。すぐ隣に同じぐらい高さの建物が建ってしまったので全貌を見ることが出来ないのが残念です。
 この建物に限らず、東京には変わった建築物がたくさんあります。私は以前に建物を“見る”仕事に関わっていたものですから、一般の人と比べると建物に対する興味は強いのです。有名、無名を問わず自分の好みや趣味で探してみると、次から次へ面白い建物が見つかります。著名な建築家の建物は雑誌や本に紹介されていますが、自分流の尺度で計ったものはまた別の面白さが有ります。お金と暇(暇はまあ有るほうなのですが、お金がねえ・・)が有ればせめて東京中ぐらいを回り、建物の写真を撮って出来れば持ち主の話ぐらいは聞いてみたいと思います。日本では建物に関して文化財としての位置づけが低く、持ち主の都合でいとも簡単に壊されてしまいます。中央区の明石小学校の取り壊しは記憶に新しい事件でした。本来文化の担い手である行政がこのレベルですから、個人の所有される建築物は、仮に著名な建築家のものであっても、文化的な考慮は全く無視されることが一般的です。建築家集団の肝いりで、文化財的色彩の強い建物の保存運動も有りますが、資金や前出のレベルの関係で難しいようです。
 ともかく、軍艦マンションは壊されずに改修されるようですから一安心です。亡くなった設計者も胸をなでおろしていることでしょう。

こちらは聳えるではなく 横たわる迫力で・・・。