報告書未提出

 つい先日暇つぶしにテレビつけたらNHKで“戦争を語るシリーズ”みたいなドキュメンタリーの放映をやっていて、第2次大戦中にフィリピンに派遣された秋田14連隊の生存者が生々しい証言をしていました。現地住民を村ごと虐殺したと言うのです。ゲリラ掃討の名目で村ごと、女も子供も殺したという証言でした。証言した人は「どんなことしたかなんて言えない、命令されたことだから・・」、また「銃剣で刺した、胸とか首の付け根とか・・」など、口に出来ないほどのことをしたと暗にほのめかしたり、具体的に語ったり表現は様々でしたが、共通しているのは出来ればあまり語りたくない様子が感じられる、聞いていても話すつらさが伝わってくるインタビューでした。人肉を食べたらしい光景を見た話もされていました。皆さん90歳前後でやっと重い口を開いたのでしょう。あの戦争で日本軍が各地でやったことを正確に伝える、あるいは記録を残すことが出来る時間はもう僅かしか残されていないでしょう。
 よく言われることですが、私達の国では物事の総括を曖昧にする風潮が有ります。現状を正確に把握し、その原因を客観的な判断にもとづき明確にする、こうしたプロセスを経てはじめて次の段階に進む、と言ったことがないがしろにされがちです。何人かの作家や幾つかの本であの戦争の記録に関わるものが取り上げられています。しかし、私達は学校の授業の中でそれらの事実をきちっと教えられたり、公的な資料として図書館や役所で自由に閲覧できる環境を未だ持ちえていません。敗戦後の悲惨な経験はよく聞かされますが、それとは別に戦争中日本軍は戦地でどの様に戦い、どの様に負けたのか、またどのようなことを現地の住民に対し行ったのか、客観的な事実を記録として残す責任が私達には有ると思います。「俘虜記」を表した大岡昇平が「レイテ戦記」を書くにあたり、日本政府としての公式な戦記が無いことをそのきっかけの一つにしたことは有名です。私達の国は、国として起した行動について国としての総括や実態把握をしていないのです。
 毎年8月が来ると年中行事のごとく戦争が語られます。しかし、この国がかかわった戦争の詳細について、当事者としての国の報告書は未だ出ていません。

今週から8月だし すこしはしゃんとね・・。