喫緊の課題

 千島海溝を震源地とする巨大地震の可能性が高まっているとのことで、改めてこの国の地震との関わり方が問われている。神戸・淡路大地震から20年も経たないその間に、あの東日本大震災、昨年の熊本大地震などの巨大地震を含めて数多くの地震が起きている。因みに2000年以降に起きた震度5以上の地震は200回を超える。2011年の60回は別にしても、それ以外の年でも年平均9回強の頻度で大地が大きく揺れていることとなる。ユーラシアプレートの端に位置するこの国は、まさに地震と火山の巣の中にあるのだから、当たり前と言えば当たり前すぎる事象だ。にも拘らず私たちは暢気に暮らしている‥様に見える。
 
 いまさら言うまでもないが、この国の都市は過密と無計画に造られた巨大おもちゃ箱のような構造で、地震だけでなく多くの災害に対して甚だ心もとない。中でも東京、大阪、横浜などの大平洋側に面した巨大都市は、海底プレートを震源とする大津波の危険にも晒されていて、近い将来に予想される東南海地震による津波被害は、東日本大震災を上回るとも言われる。加えて東京は直下型大地震の発生する確率が、近年ではますます高まっていて、向こう30年の間にM7クラスの地震が起きる確率が70パーセントという予測は、大げさではなく現実味を帯びてきている。2011年の震度5強で露呈した東京の都市機能の脆弱性は、その後ほとんど改善されぬまま現在に至り、言うなれば素足、裸で火事場に向かうような状況が続いている。北朝鮮のミサイルに対しての備えとして、イージスシステムを地上配備することにはすぐ予算措置しようとする政府が、ミサイルよりはるかに現実的で巨大な災害をもたらす地震津波にはまるで疎い。東京が直下型地震に見舞われて想定されているような被害状況になったとすると、日本のみならず世界の経済活動に深刻な状況を生み出すことは明らかであり、国民も含めてこの国の地震への対応はあまりに杜撰すぎる。
 
 デフレ脱却や少子化対策、教育費無償化、景気対策…なども結構だが、震度7クラスの地震に東京、大阪が襲われて重大な被害が起きれば、続々と再稼働する原発がそれらに連動して破壊されれば、もうデフレも景気もあったものではない、悲惨な状況の中で私たちは暮らす羽目に陥ることとなる。喫緊の課題とはこういう事を言う。