考えてみれば・・・

このタイトルで3度ばかり書いてみたのですが、どれも愚痴ばかりになりボツにしました。普段は大体一発書きですから珍しく慎重と言えます。やはり、ここにきて今まで自分の書いたものが如何にいい加減なのか、少し分かってきたのかも知れません。
なんてことを言いながらまた同じ愚を繰り返すのですから、3度の書きなおしも意味はないのですが・・・。この文章を見ればそのことは歴然です。
“余談だが・・・”と前置きをして歴史的事実などを解説することが得意だった司馬 遼太郎さんですが、“司馬史観”などと言われて信奉者も多く、私も下手な歴史書を読むより為になると思っていました。その司馬史観を額面通りに受け取るのは如何なものかと言う人もまた居て、「坂の上の雲」を引き合いにして司馬史観の弱点や疑問点を解明している本を読みました。中村 正則著の“「坂の上の雲」と司馬史観”というタイトルの本です。「坂の上・・」はすでにNHKでドラマ化され放映されていますが、原作より更に明治政府と登場人物が美化されていて、やや食傷気味のお話となっていましたから、この中村さんの本は新鮮に思えました。この方はいわゆる歴史学者ですから、感情を作品に投影する小説家とは一線を画す立場で“司馬史観”に対峙しています。「坂の上・・・」で引用される歴史的事柄の事実関係の齟齬や司馬さん思い込みに対して、言ってみれば“愛情ある突っ込みを入れている”ように感じられました。中村さんの本は2009年に発行されていますから、すでに司馬さんは鬼籍に入っておられて反論のしようがない事情を考慮したものなのでしょう。この手の本は対象本をとことんこき下ろすものも多い中で、冷静に事実関係を追ってゆく解説は読んでいて納得できるものでした。
考えてみれば、私も司馬作品にはかなり興奮させられた口ですが、小説と歴史的事実をどうしても混同してしまう、“罠”にはめられてしまうような独特の語り口に、一時期注意したことを想い出します。しかしそれだけ司馬作品は面白く、読み物として完成されていたことなのでしょう。ただしNHKの「坂の上・・」はいただけません、あれは。

昨日よりはしゃんとしているわね