世界遺産登録のばか騒ぎ

上野の国立西洋美術館世界遺産に登録されるとかで盛り上げっている人たちがいるようです。まあ盛り上がるのは勝手ですから別に反対する気はないのですが、コルビュジエが設計した建物群の世界遺産登録ですから、上野の美術館本体だけの栄誉ではなく、ましてや日本古来の伝統的建物が評価された訳でもないので、何がそんなにおめでたいのか理解に苦しみます。そもそも国立西洋美術館コルビュジエの代表的建築物ということではないでしょうし、「サヴァア邸」や「ロンシャンの礼拝堂」ほどのインパクトもない、言ってみればコルビュジエが設計しただけの建築物との評価もある美術館に、審査会場まで代表を送るなどは、この国の文化の後進性を内外に露呈するだけであると思います。“スクラップアンドビルド”を掛け声にして多くの歴史的建築物を破壊する愚行をさんざん繰り返しておきながら、世界遺産と言うだけで有り難がる無見識をいつまで続けるつもりなのかと、今更ながらに呆れてしまうのは私だけではないでしょう。
世界遺産に登録されることを地元商店街や観光業界がとりわけ関心を示すのも納得できません。観光資源に箔をつけるために世界遺産制度がある訳でもなく、富士山や富岡製糸場のように露骨な商業主義と結びつくような誘致運動は、この制度がオリンピック同様に腐敗と本来の趣旨を失うこととなる危惧を覚えます。それとも既にあのオリンピック誘致のばか騒ぎと賄賂合戦が世界遺産登録でも起こっているのでしょうか。
日本国憲法第9条」を世界遺産に登録しようという運動がありますが、これなどは商業主義とは全く無縁なものですから大変結構なものと思いますが、どうも実現する気配はほとんどないようです。この「第9条」はノーベル平和賞にもノミネートされていますからそちらのほうが早いかも知れません。
とにかく世界遺産を一つでも多く登録させようとする商業主義と低次元の待望論はやめたほうが良いと思うのです。


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