二十八日目

 猫が同居するようになってからすでに20年以上になる。最初の猫は9年で死んでしまった。もともと体が小さく食も細い体質だった。その猫が亡くなってから3年ほど時間が空いて今の猫が来た。今年で14歳になるからもう老境にさしかかっている。私はもともと犬派だったから猫と暮らすことなど考えもしなかった。今でも犬は好きだが猫には一歩届かない。

 猫は魔物という人も居るが、確かに一度家の中に入れるとなぜか離せなくなる。“魅入られる”というか、“薬中”になったような(なったことはないが)状態に落ちてしまう。魔物と言われる所以であろうか。前の猫が亡くなってからの3年は俗にいうペットシンドローム状態で、回復するまで次に行けなかったのだった。本当は縁を切りたかった。しかしズルズルとまた深みにハマってしまった。”クスリ“と同じ(やったことないけど)である。
 猫なで声というのがあるが、猫と話す(猫語は話せないが)ときにはなぜか声が裏返ってしまうようで、いわゆる猫なで声となる。もともと猫がヒトに媚びるときに出す声のことを猫なで声と言ったようだが、ヒトが猫に媚びるときの方が圧倒的にそのような声になる。幼児語になるときもあり、猫のパパ、ママになってよそ様の白い眼を浴びたりもする。

 夜に何度も起こされ、早朝から起こされ、出かけたときは用事を済ませるなりすぐ帰る、そんな生活を余儀なくされる。作家の小池真理子さんは、同居していた猫のために外泊を止めたとその昔書いていた。まさにそのような生活になってしまう。猫に支配されてしまうとでもいう状況にハマってしまうのだ。

 昨今では猫動画という代物がネット上に溢れかえり、世界中がそれらを見て喜怒哀楽したり、稼いだりしている。うちの猫は稼いだりしてくれないが、いつまでも元気でいてくれればそれでよいと思っている。